第6回 盲導犬サーブ

名古屋市の繁華街・栄の久屋大通公園に「盲導犬サーブ」の銅像があります。よく見ると左の前脚がありません。これには理由があります。
  サーブは1977年生まれのジャーマンシェパード。名古屋市にある中部盲導犬協会で
訓練を積んで盲導犬になり、岐阜県でマッサージ治療院を営む亀山道夫さんに付き添い「目」となって活躍しました。
 1982年1月25日朝、亀山さんはサーブを伴ってガードレールのない上り坂の国道のカーブを歩いていました。そこへ雪でスリップした車が突っ込んできました。サーブは亀山さんを守ろうと素早く亀山さんと車との間に入るように動きました。サーブの動きにつられて亀山さんは倒れそうになりながら、車の突進から逃れることができ、軽傷ですみました。しかし、サーブは車にはねられて重傷を負い、左前脚を切断することになりました。
 盲導犬として活躍できなくなったサーブは、盲導犬協会に戻り余生を送ることになります。

当時、交通事故に遭った盲導犬は自賠責保険の対象になりませんでした。事故が世間に
知られると、保険適用を求める声が高まりました。
 1983年4月、サーブは亀山さんと新幹線に乗って東京へ向いました。国会の「交通安全対策特別委員会」に参考人として出席するためです。この委員会では、盲導犬も自賠責保険の対象になるという政府見解が述べられたほか、国道の危険地区に歩道をつけることも決まりました。
  1985年4月、裁判所の調停で、サーブに加害者の自賠責保険から260万円の賠償金が支払われるという決定が出ました。
  サーブはその後も、盲導犬理解の啓発運動や交通遺児をはげます会に出席するなど
活躍を続けます。そして1988年、老衰で亡くなりました。11歳でした。
 銅像は亡くなる2年前、名古屋駅に設置されましたが、駅増改築のため、2003年に
栄の久屋大通公園に移されました。写真は銅像の台座にある碑文です。

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