「銅像になったイヌ」を巡る

イヌはネコに比べて、飼い主への忠誠心が強いといいます。
その献身的な行動が、時には美談として後世に伝えられて、銅像となるイヌもいます。
そんな銅像を各地に訪ねてみました。(長谷川千尋)

 1914年(大正3)春、北海道小樽市の火災現場で、1匹の子イヌが消防隊員に拾われました。雑種のオス。ブチがあることから「ぶん公」と名付けられ、消防隊舎で飼われることになります。餌は隊員たちの弁当を少しずつ分けてもらっていました。特に身欠きニシンとキャラメルが好物だったと言います。

 そんな「ぶん公」の銅像を昨夏、小樽名所のひとつ、運河跡に近い一角に訪ねてみました。

 小樽は当時、火災の多い街でした。そんな環境で育ったためか、隊員が毎朝整列して「一」「二」「三」……と点呼すると、「ぶん公」が最後に「わん」と付け加えたとのことです。通常電話と非常ベルとの違いも聞き分けて隊員に知らせたり、一緒に消防車に乗ったりもしました。
 火事現場では消防ホースのもつれを直したり、野次馬の交通整理をしたりといった、ちょっと出来すぎた目撃談が当時の小樽新聞に載っています。

「ぶん公」の銅像の側面には、消防車のサイドステップに乗る写真が掲げられています。その姿は、どこか誇らしいようです。

 銅像の近くにある小樽市総合博物館運河館には、ぶん公の剥製が展示されています。
1938年、隊員たちに看取られて亡くなりました。24歳という長寿でした。
火災現場で拾われて、消防署員に可愛がられた一生だったと思います。


 * * *  昨年11月以来、10回にわたり連載してきた「銅像になったイヌを巡る」、今回で終了です。現地を訪ねてみると、興味深いエピソードばかりで楽しい思い出になりました。    (長谷川)

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